- ナノ -


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 冷たい風が少しずつあたたかさを帯びてゆく。その感じが、不安を抱きながらもこれから向かう空への期待で胸が満ちる、あの瞬間、飛び立つとき、それに似ていると竜は思う。微睡むような青から、花がほころぶような明るい青の空へ。その季節を待ち望んでいたと、世界も笑っているような気がする。竜は翼を広げた。


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