- ナノ -


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 この森には風の竜が住むという話があるんだ、と少女の祖父は言った。彼女は目を輝かせる。私、会ってみたい。探しに行ってもいい? 祖父は静かに首を振る。そっとしておくことだ。だが、運がよければ空を飛ぶ姿を見られるかもしれない。いつか竜が空に還る、そのときにな。一陣の風が吹き抜けた。森の木々が古くから伝わる言葉をささやくように、ざわざわと揺れた。


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