- ナノ -


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 いまだ冷たさの残る大地に、梅の花がほころぶ。その愛らしい花を差しながら、人の子は竜に言った。これ、これ、このお花。ぼくの名前のもとになってるの。竜はほう、と相槌を打つ。春がきてるよ、っておしえてくれるお花なんだって。子はにっこりと笑い、竜を見た。寒空の下に、もうひとつ春を告げる花が咲いたようだった。


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