- ナノ -


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 ねえ、苦手なものってあっちゃだめなのかな。膝を抱えて、少年は言った。竜はこたえる。あってもいい。もちろんだ。だが、否応なく苦手なものに直面することがこの先きっとある。そんなときにどうするか、何ができるかだ。少年はやや顔を上げて竜の方を見た。竜はしばしの間の後、言った。わたしも泳ぎは苦手でな。もし水の中に落ちたらどうするか、いつも考えているんだよ、と竜は笑った。


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