- ナノ -
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龍は、人が現れるずっと昔からその河に住んでいた。澄みきった水には多くの生きものたちが暮らしていた。彼らに会うことが、龍の毎日の楽しみだった。しかしいつからだろう。水が少しずつ濁り始めたのだ。生きものたちも徐々に姿を消し、いま、ここにいるのは龍だけだ。闇のように底知れぬ色になってしまった河で、龍は在りし日々を思い返しながら、静かな眠りにつこうとしていた。
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