- ナノ -


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 ねえまだなの、と背中の上から彼女は急かす。竜は少々呆れ顔だ。全速力で飛んでいる。あと少しだ、と声を返せば、彼女の顔はぱっと輝いた。やっと、やっと、初めて見られる。空と同じ色の、大きな、大きな……。彼女が言い終わらないうちに、突如目の前の森がきれ、青いかがやきが閃いた。海! 踊り上がらんばかりの彼女に、しっかり掴まっていろ、と言いながらも、竜は笑っていた。


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