- ナノ -


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 休憩、と。竜の話を書き留めていた男は、筆を止め鞄から小さな包みを取り出す。男が紙を取ると、薄茶の少し堅そうな塊が見えた。かすかに漂ってくる、香ばしいにおい。パン、と竜は呟いた。男は不思議そうに竜を見る。パンを知ってるのかい。竜は懐かしそうに目を細めて言った。パン屋で、働いていた。男は目をまるくして、やがてほほえんだ。竜のパン屋さんか、たのしそうだ。今度はその話を聞かせてくれな。手に持っていたパンを半分にして渡すと、竜はうれしそうにそれを受け取った。


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