- ナノ -


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 僕はね、竜にまつわる話を集めて旅をしているんだ、と彼は言った。いろんな場所で、竜に会ったとか話したとか、そういう昔話を聞くからね。不思議なことに。あなたは、竜がいたと考えているんですか? と彼女。彼はにこりと笑う。案外、まだいるのかもしれないよ。この世界のどこかにね。仰いだ空は、どこまでも青い。いまこの瞬間も、空はどこかで竜を懐に抱いているのかもしれない。


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