- ナノ -
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遠雷。驟雨。突如として霞む景色に、竜はその姿を見た。雨を司ると言われている竜の姿だ。昔、雨が人間にとってより貴重であったときに、人々の呼び声に応えて雨を降らせていたらしい。しかしいま、彼を顧みる者は誰もいない。雨止みと共に、彼の姿はかき消えた。どこか淋しげな余韻だけが、あたりに残った。
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