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- ナノ -


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 雪が、降りだした。柔らかな綿毛のように空から舞い降りては、仲間の鱗を覆っていく。かつては身をひと振いして雪を落とし、冬の風物詩だと笑い合ったものだった。だが、彼はもう動かない。あたたかにさえ思える白に、塗り込められていく。竜はその様子を、じっと見ていた。
 一粒、落ちた涙が、鱗の上の雪をほんのひとときだけ溶かした。


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