蝶よ
蝶よ、おまえはどこにいく。
この雨のなかで、
羽を休めることもせずに。
蝶よ、おまえはなぜはばたく。
この世のなかで、
まわりに流されることもせずに。
蝶よ、おまえはなぜいきる。
この闇のなかで、
絶望することもせずに。
明かりを消した部屋の窓から
ふと見えたのは
黒いかげ。
どしゃぶりの雨など
ものともせずに。
蝶は、飛んでゆく。
明かりを消した部屋のなかに
もうひとつある
黒いかげ。
どしゃぶりの雨など
ふらぬところで。
私は、沈んでゆく。
蝶よ、おまえはどこにいく。
蝶よ、おまえはなぜはばたく。
蝶よ、おまえはなぜいきる。