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- ナノ -


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 酷い怪我を負った竜の前脚を、包帯で縛る。竜に人の手当がどれだけ有効かわからないけど、と彼女は少し笑った。この怪我どうしたの、とは聞かない。彼女はただ、竜の首を撫でていた。もうすぐ竜医が来るからね。薄れゆく意識のなかで、竜は彼女の手のぬくもりを感じていた。


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