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- ナノ -


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 蝶のはばたきが、ずっと遠くでは嵐になるかもしれないんだって。彼女は無邪気に竜へと笑いかける。ねえ、私のはばたきも、この空のどこかでは、竜のはばたきくらいにはなるかなあ。ぱたぱたと手を動かす彼女を、竜はそっと見遣る。黄色の蝶が、いつの間にか、彼女の頭にとまって揺れていた。


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