- ナノ -
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あなたの名前はなあに、と、子どもは言った。竜は首を傾げる。昔はあったような、初めからなかったような、どちらともつかない。そんな竜を見て、子どもは元気に言う。名前、ないの。それならあなたは、はてなのはあちゃんね。目を瞬かせる竜の周りを、子どもはうれしそうに、はあちゃん、はあちゃん、と、駆けまわる。名前があるのも悪くはないなと、竜は少しそう思った。
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