31
- ナノ -


31

 木の葉が舞い散るなか、赤い鱗の竜は言った。ひとつとして、同じ場所へ留まり続けるものはない。すべては移り変わってゆくのだ。竜は赤の竜にこたえて言った。確かにそうだろう。だが、たとえその場所を離れたとしても、わたしたちはそこへ、戻ってくることはできる。
 竜はじっと、葉を失いつつある木々を見ていた。寒さに震えながらも、木々は、早くも次の季節への夢を見ているかのようだった。


[ ]