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- ナノ -


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 どんなに暗い雲だとしても、その裏地はかがやいている。激しい雨が打ちつけるなか、竜は頭の上に広がる雲を見遣った。脚に力を込め、大地を蹴り、勢いよくはばたく。そして降りそそぐ雨を散らし、空を覆う雲を割って、上空に飛び出した。
 たとえ地上から見えなくとも、と竜は思う。そこにひかりはある、必ず。竜は飛び続けた。この景色を、いつまでも忘れないように、と。


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