- ナノ -
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竜は、もう長い間、空を飛んでいなかった。竜という生きものが存在することを、世界が忘れ去ってから久しい。そうである以上、うかつに姿を現すことはできなかった。森の奥深く、じっと動かない竜は、過ぎ去った時の中にまどろむ。木漏れ日が、苔むした竜の鱗を、やさしく照らした。
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