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森に、人の子が迷いこんできたことがあった。竜は、赤く熟れたきのみをとってやり、尾を動かして子どもと遊び、夜は前脚の間に子どもを抱いて眠った。ある日、子どもを探す人々の声がした。竜は子どもをその場に置いて深い草の茂みに隠れた。
竜が守ってくれたんだよ、と子どもは大人たちに言った。ばかな、竜はとんでもなく狂暴なんだぞ。見つかれば食われてしまう、と大人たちはこたえた。一瞬、茂みの竜と、子どもの目が合った。竜は子どもの未来を思った。そして牙を剥き、眉間に皺を寄せ、世にも恐ろしい顔をした。子どもはもう二度と、竜の方を振り返ることはなかった。