- ナノ -


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 見渡す限り、白の世界。上も下もわからなくなるような濃い霧の中を、竜は飛んでいた。やがて、光がぼんやりと前方に灯る。それは二つ、三つと増えていき、いつしか数えきれないほどとなった。
 少しずつ霧が薄らぎ、あかりを灯す山間の家々が見えてくる。その静かな佇まいに、竜は不思議と、懐かしさのようなものを覚えた。


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