- ナノ -
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竜なんていない、ってお母さんが言うんだ。人の子がしょんぼりとうなだれている。仲間に話してみよう、と竜は言った。
その翌日。子の母が料理をしようとすると、突然、竈門に火が入った。驚いた彼女が水場に手をつけば、放った記憶もない勢いのある水がその手にかかる。彼女はよろめき、何か大きなものに背中からぶつかった。……竜だ。にやり、と笑ったその竜の頭の上で、小さな火竜と水竜が目をくりくりさせていた。
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