子竜羽ばたく向こうの丘
そこから戻る影ひとつ
竜ら さっきの旅人が
子竜に会ったことを知る
あわてて駆け寄り竜は言う
これはまことにお恥ずかしい
年端のいかぬ子のことです
どうか許してやってくださいませ
まったくもって 飛ぼうなど
愚かな竜だったでしょう――
旅人 かすかに笑ったが
まっすぐ貫くその視線で
竜らをひたと見据えながら
ひとことだけ こう言った
なるほど たしかに 愚かでした
わたしや あなたたちと
同じくらいに ね
そのまま 旅人 礼をして
彼の旅へと戻ってゆく
口をあけたまま 何も言えぬ
小さな羽の 竜らを残し――