- ナノ -


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 そこにある全てを白に染める一瞬の光が走った。間を置かず、腹の底まで響く大太鼓のような音が空から降る。重く垂れ込めた雲から大粒の雨がぼとぼとと溢れ始めた。
 その中にあって、雲と雲、稲妻と稲妻の間を気持ちよさそうに飛びまわる龍を、彼は見た。まるで夏の盛りに水浴びでもしてるみたいだな、という彼の呟きに、実際、雷龍にとってはそのようなものかもしれないと、彼の傍らにいた竜が答えた。


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