- ナノ -



さくらさくら
2017/04/08 13:15

こんにちは。
かたいつぼみもいつのまにかほころび、桜の花があちこちに咲く季節となりました。
淡いピンク色の花が風にゆられているのを見ると、「ああ、春だなあ」という気がしてきますよね。
数日前からしばらく続いていた強風にも耐えて、いま、私のいる街の桜はいちばんきれいなときをむかえています。
みなさんのお住まいのところではいかがでしょうか。


桜を見ると、胸のなかにほんわかと春の訪れのあたたかさを感じるのですが、
同時に、なんだか少しさみしいような、切ないような気持ちがこみあげてきます。
いつのころからか、そういうふうなさみしさや切なさを覚えるようになっていました。
まだちいさなころはきれいだなあと思うだけだったし、ともすると、
きれいだけどそれだけのこと、そんなに時間をかけてじっくりと見ようとはあまり思わなかったものです。
それがいまでは、桜が咲いていることに気がつくと、ふと足をとめてゆっくりとながめたい気持ちになります。
それどころか、はやく桜が咲かないかなあ、まだかなあ、と、いつのまにか、桜の花が咲くのをこころ待ちにするようになりつつあります。
桜が咲くのなんて、これまで、「気がついたら咲いていた」くらいのものだったのに……

春は出会いと別れの季節、なんてよく言われますが、
このことばがほんとうに身に染みて感じられるようになったのは、そう昔のことではないような感じがします。
ちいさなころにはまだぴんとこなかったことば、たしかにそうなんだけれど、でもそれだけじゃんと思っていたことばが、
年月を重ねるにつれて、だんだんと色あいと奥行きを持って見えてくる。
それはきっと、さまざまな出会いや別れを、自分の身をもって、他でもない自分自身の記憶として、
いま、このこころのなかに引き受け、感じているからなのでしょう。
はかなくちいさな、けれども、とても美しい花をいっぱいに咲かせ、そして時が来ればその花びらをめいっぱいに散らせてゆく桜は、
もうここにはいない大切なひとたちとの出会いを、過ぎ去ってしまったかけがえのない時間を、
私のこころのなかにそっと思い出させてくれるものなのかもしれません。
そして、いまここにある大事なひとたちや、大事な時間とも、いつの日か避けがたく道を分かつときがやってくるのだということを、
やさしく、気がつかせてくれるものなのかもしれません。
しかし、また季節がめぐり、桜の花があざやかに咲きほこるように、
その時間があったことは、そのひとたちがいてくれたことは、ずっとこころのなかに残り続けるし、よみがえり続けることでしょう。
それから、同じように咲く桜でも、去年の桜と、今年の桜、今年の桜と、来年の桜が、ちがっているように。
新しい姿のさくらに、毎年、出会うように。
きっと新しい、きらめくような出会いも、たくさんある。

歩いてきた道の途中にあったもの。出会ったひとたち。
いまここにあるもの。いてくれるあたたかなひとたち。
この先にあるもの。これからめぐり合う、すてきなひとたち。

その、すべてを大切にしたいと思えます。
過去、現在、未来が、つかの間、交差する。
そんな不思議で、はかなく、切ない、桜をながめながら。


さくら、さくら、咲きほこれ。






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