- ナノ -



あとがきのはなし
2022/02/27 22:09

あなたは図書館にいます。
たくさんの本がその背表紙を並べるなか、ふと気になる一冊の小説が目に入りました。
思わず手に取ります。そして本を開いて、あなたが探したのは……

あとがき! というかた、いませんでしょうか。
よく考えてください、冒頭部分とかもくじとかではなく、
あとがき! と思ったかた、きっと一定数いらっしゃるはずです。
何を隠そう、私自身が長らくそのひとりだったからです。
本を見るとき、これを書いたかたはいったいどんなかたなんだろう?
どんなことを思ってこのお話を書いたんだろう?
それが気になって、ついついあとがきを探してしまうのでした。
本によっては物語本文の「あらすじ」そして「たねあかし」まで載っていることもあり、
最初にあとがきを検めるのはなかなか危ないこともあるのですが……
そうした危険も顧みず! です。
だって気になるものは気になるのです、仕方ありません。
場合によってはあとがきを読んでその本を読んでみるか、
書店の場合は買ってみるかどうかを決めることもあり、
私のなかで本のあとがきというのはかなりウエイトの大きなものだったと言えるでしょう。

そんなあとがきなのですが、読むのも好きなら書くのも好きでした。
どれくらい好きだったかというと。
それはもう、完結していない物語にあとがきを書くほどです。
終わっていないならいったいなんの「あとがき」なのか? あとがきとは?
と、ナゾの哲学に踏み入りそうになりながらも、がしがし書いていました。
だって書きたいものは書きたいのです、仕方ありません。
上手にあとがきを書けたなあと思ったらなんとなくその後の物語もうまく書ける気がして、うれしかったりもしました。
私のなかであとがきを書くというのもかなりウエイトの大きなものだったと言えるでしょう。

そんなあとがき大好きな私でしたが、いつのまにか、「あとがき書かない人間」になっていました。
いやあほんと、いつのまにかだったんです。気がついたら書かなくなってたよね、と。
その理由をううむと考えていたのですが、ここ最近は、一種の「燃え尽き症候群」なのではないか? とか思っています。
つまり、その作品に関わるすべてを、その作品内に注ぎ込んでしまったが故の無言。
あとがきに使うはずだった力ももはや果てています。
いざ大手を振ってあとがきを書くことができる状態になったと思ったら、こんな結末になろうとは……!
そういえば、短くともきちんと文章を仕上げられるようになってからその傾向が出てきた感じもするんですよね。
あとがきと私はどうもおたがい片思いの関係のようです。

もうひとつ考えられるのは、エッセイを書くようになったからということです。
考えてみれば、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつくるあとがきという存在は、かなりエッセイに近い感じがするのですよね。
ひたすらにあとがきを書いていたときは、書きもののジャンルにエッセイというものがあるのを知らなかった小さいころと、
知ってはいてもあまり意識していなかったころでした。
自分でその方面の書きものをするようになって、もともとあとがきとして書いていたものや書きたいと思っていたものが、
その書きものの本文で書けてしまったが故の無言。
そういうことなのかもなあ、と思ったり。

ちなみに、読む方はというと。
あとがきがある本はいまでもあとがきから拝見したりすることはあるのですが、こちらも習慣自体はかなり薄れてきました。
なぜかというと……あとがきがない本が、なぜか多くなってきたからです。
たまたま、興味を持った本にあとがきがないパターンが増えたのか、
最近の作品自体に、あとがきがないものが増えたのか。
それは永遠のナゾではありますが……
あとがきがないものが多いので、だんだん本文の最初を見てみるという方に自然にシフトしてきた感じです。

読む方にしても、書く方にしても、みなさんはいかがでしょうか?

それでは今日は、このあたりで。







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