★次の世界で待ち合わせ


 トム・リドルは変わった人だった。何よりも印象的だったのは、彼が蛇と話せると言うこと。幼い頃私が公園で遊んでいて、どこかから逃げ出したのか小さな蛇を見つけた時。毒がある蛇だったのかは今でもわからないけれど、恐怖におののいていたところを偶然助けてもらった。しかし、彼が発した言葉は理解できなくて、その時はリドルすら怖くて逃げ出した。

 その後、孤児院で彼を見た時は心臓が止まるかと思った。引っ込み思案な私はあまり仲の良い子以外とは関わらないから、孤児院にいる人すべてを把握しているわけではない。だから、彼が、まさか同じ孤児院にいたなんて考えはあるはずがなかったんだ。


「ねえリドル、リドルはどうして蛇と……その、お話出来るの?」
「そんなの、僕が知るわけないじゃないか」
「……きっと、リドルは選ばれた人なのね」


 赤い瞳をじっと見つめると、リドルは何も言わずにため息をついた。多分、リドルは私のことを馬鹿にしている。見下してる、といっても過言ではないかもしれない。それなのに、今まで仲が良かった友達を放っておいて、彼のそばにいることを選んだのは、きっと彼が寂しそうに見えたから。


 そうして、彼はホグワーツとかいう魔法を学ぶ学校に行ってしまった。友達もいない、孤立していたリドルを選んだ私は孤児院ではひとりぼっち。以前友達だった子達も、リドルと関わっていたというだけで私を嫌煙するようになる。だけど、夏になればリドルは帰ってくるし、魔法の話を沢山聞くことが出来た。だから、寂しくなんて無かった。



 まあ、本音を言うなら少し寂しかった。ここにいるときはリドルには私だけだったのに、彼の世界が広がってしまった。私には彼だけなのに、ずるい、なんて考えるようにもなっていた。
 だけどリドルは変わってなかった。確かに友人と呼ぶに値する人は出来たのはもしれないけれど、心の奥底は覗かせていない。もちろん、私にも。




 だから、リドルのすることにはいつも驚かされる。


 どうしてリドルが私を押し倒して、首に手をかけているのか分からない。


 だって、あなた今までそんなに楽しそうな顔見せたこと無いじゃない。



「なん、で……」
「確かに、君のことは割りと好きだったよ。だけど、マグルは嫌いなんだ」
「マグル? マグルって、な、」



 言葉を紡ぎたいのに、うまく息ができない。リドルの両手の力が強くなって、意識が朦朧としてくる。やだよ、死にたくない。まだやりたいことだってたくさんあるし、リドルに好きだって伝えてない。悲しくて悔しくて、涙を流すとリドルは一層楽しそうに口元を歪ませた。


「君は笑っているより泣き顔の方が似合ってるよ」
「リドル、離して……」
「嫌だね、指図されるのは嫌いなんだ」
「おね、がい……!」
「喜ぶことだよ。君だけは僕がこの手で殺してあげるんだから」





「でも……そうだね。


僕の新しい世界に、純血として生まれておいで」









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