★プロローグ

「あんたなんていらない」

 それは、世界で一番嫌いな言葉。



 私の大好きな人が、私を必要としてほしかった人が、苦しそうな表情で私に言う。そのあとの言葉もなにも聞こえない。
 視界がぐるぐる回って、彼の顔を見ることができない。聞き慣れた声が私を呼ぶのと同時に、その場から逃げ出した。

 やっぱり、私はここにいていい存在じゃなかったみたい。みんなが優しいから、彼が優しいから、勘違いしちゃったんだ。みんなと笑いあって、協力して、日の光の下で生きていくことは、私には難しかったみたい。
 嫌いな言葉。その言葉が、心の奥底に閉じ込めていた記憶を引きずり出す。いや、思い出したくない。あの言葉以外だったら、きっと、もっとうまく対応できたと思う。良くも悪くも演じるのは慣れてるから。困ったように笑って、ごめんねって言って、時間をおいてから話をすれば、どうにかなったかもしれない。
 だけどね、やっぱりあの言葉だけはだめだった。本当は逃げちゃいけない。なんて言われても、彼らが輝くために動くのが私に与えられた役なんだから。



 決意が、勇気が、心が、がらがらと崩れていく。

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