白恋と雷門の試合が終わった。試合には負けてしまったが、俺たちはそれ以上の物を取り戻した。白恋のサッカー、そして吹雪先輩。これからはまた吹雪先輩とサッカーが出来る。そしてこれから本当の白恋のサッカーが出来るんだ。

白恋に戻ったら吹雪先輩に俺の必殺技を見てもらおう、化身のことを話そうと白恋に戻った後のことを考えていると、後ろから誰かに声をかけられた。

「本当の白恋と試合が出来て楽しかったよ!」

声のした方へと振り向くと、そこにいたのはMFからGKへとポジションチェンジし、俺の化身シュートを蹴りで返した彼だった。先程まで敵として戦っていたにも関わらず、試合が終わればそんなことは関係ないと言わんばかりに話す彼に俺も自然と言葉が出た。

「あぁ、俺たちも楽しかった。白恋のサッカーを取り戻せたんだ。雷門には本当に感謝している」

素直な気持ちを言葉にすれば、目の前の彼は嬉しそうに笑ってみせた。フィフスセクターという強大な敵と戦っているはずなのに、目の前の彼や雷門の彼らは生き生きとしている。

話しかけてきた彼の後ろでは雷門の選手たちが勝利を喜び合っていた。更にその後ろでは、雷門の監督とコーチ、そして吹雪先輩が話していた。二人と話している吹雪先輩をちらりと見れば、吹雪先輩は俺の前では見せたことがないような表情を浮かべていた。

きっとあの二人は吹雪先輩にとって心を許せる相手なんだろう。だから吹雪先輩はフィフスセクターに白恋を追放されたあと、雷門にいる彼らを頼って雷門へと身を寄せたのだろう。

「信頼、か・・・」

俺は知らずのうちに言葉を口にしていた。その言葉に目の前の彼は不思議そうに俺を見たのが気配で分かった。俺は吹雪先輩たちから彼へと視線を戻し、ふと気になった質問を彼に投げかけた。

「もし君もすごい信頼してた人、そうだな君のところの監督に裏切られたと思ったらどうする?」

馬鹿な質問をしている自覚はあった、それでも聞いてみたくなった。きっと今まで誰かに裏切られたこともないような彼が信頼する人に裏切られたらどう思うのか、どんな行動をとるのか、それが気になった。

「何か理由があるって思う。だって自分が信頼してる人だったら、そんなこと絶対しないんじゃないかな。それにそれが円堂監督なら尚更そう思わずにはいられない」

考えを巡らすこともせずに答える彼の言葉は、彼が雷門の監督のことを心から信頼しているということを俺に分からせるには充分だった。彼は絶対的な信頼を雷門の監督に持っていて、裏切られるわけなんてないと心から思っている。

「絶対なんて言い切れるのか?」

絶対、その言葉の持つ意味を彼も知ってはいるだろう。それでもその言葉を選んだ彼に俺は問い詰めるようにもう一度聞いた。

「うん、絶対だって言い切れる」

俺からの意地の悪い質問にも彼は即答してみせた。その迷いのない言葉と瞳の力強さに、これ以上彼にどんな質問を投げかけたところで彼の答えは変わらないことを悟った俺は、そうかと一言だけ返してこの話を切り上げた。

それと時を同じくして、雷門のベンチ側から彼を呼び戻す声がこちらに聞こえた。それに気付いた彼が返事をし、それじゃぁまたと言って雷門の輪へと戻っていった。そんな彼の背中から雷門の輪、そして雷門の監督へと視線をやれば、雷門の輪へと戻っていった彼を雷門の監督は笑顔で迎えていた。

彼が、そして吹雪先輩が絶対的信頼を寄せる人。そう思うと何故か今まで気にならなかった雷門の監督のことを知りたいと思う俺がいた。





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