二人で秋姉の焼いたクッキーを食べながらのんびりとしたおやつの時間を過ごしていた午後三時。学校でこんなことがあったとか、部活ではこんな練習をしたんだと秋姉と他愛無い話をしていた時だった。

「秋姉ってオレンジ色好きだよね」

秋姉を見てふと気になったことを口にすれば、秋姉は持っていたコップをコトリと机に置いていつもみたいに優しく笑ってみせた。

「なんでそう思うの?」
「うーん、秋姉の服とか持ってるものってオレンジ色のものが多いなって思ってさ」

持ってる服や小物にオレンジ色がさりげなく入っているものが多い気がする。そういえば靴はオレンジ一色だ。

「あ、それとオレンジジュースも好きだよね」

今日のおやつであるクッキーと一緒に出されたオレンジジュースが入ったコップを持ちあげて自信満々に秋姉の顔を見れば、秋姉はちょっとだけ驚いたみたいだった。

「正解。天馬、よく見てるわね」

ほらやっぱり!いつもお菓子と一緒に持ってきてくれる飲み物はオレンジジュースって決まってるし、思い返してみれば外食とかでも秋姉はいつもオレンジジュースを頼んでる。

「オレンジ色もオレンジジュースもとっても好き。昔から、そして今もこれから先もずっと好きだと思うな」

すごく優しい顔で話す秋姉を見てると、やっぱりオレンジのものが大好きなんだなって改めて感じられた。

「天馬は好き?」
「うん、俺も好きだよ。オレンジ色もオレンジジュースも!」

秋姉の質問に俺は間も空けずに答えた。昔からオレンジジュースは好きだったし、オレンジ色みたいに明るい色も好きだ。

「ふふっ、じゃぁこれから先もっと好きになるかもね」

にっこり微笑む秋姉の顔はなんだか楽しそうでいて、そして嬉しそうだ。こんな秋姉の顔を見たのは初めてかもしれない。それにしてもこれから先もっと好きになるかもしれないなんて、秋姉は俺の心の中でも読めるのかな。

最近俺は今まで以上にオレンジのものを好きになった気がする。自分でも理由はよく分からないけど、オレンジ色をしたものがよく目につくようになって目で追っていたりする。そういえば今だって秋姉の着ているオレンジの服の色が気になってこんな話をしだしたんだ。

でもなんでこんなにオレンジのものが気になるのか全然分からない。何だか心の中がもやもやして手にもったコップをぎゅっと握れば、コップの中のオレンジジュースが少しだけ揺れた気がした。

「きっとすぐに分かるわ」

悩む俺に気付いてそっとかけられた秋姉の声に、やはり秋姉は俺の心の声が分かるみたいだと改めて思った。


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