もう季節は春を過ぎたというのに、今日は雨が降り気温は低い。この時期ってこんなに寒かったっけ?と円堂は自分の冷たい手を擦り合わせた。手の先だけではなく、足の指先までも冷たい。数日前まではとてもいい天気で気温も高かったというのに、この差は一体どうしたものか。


(今日はサッカー出来ないなぁ)

そんなことを考えて円堂が窓の外を見ていると、後ろから一之瀬が声をかけてきた。

「おはよう、円堂」
「おー、一之瀬おはよう!」

窓の外を眺める円堂の顔を見て、一之瀬は円堂が思っていることをすぐに見抜いた。

「今日は流石にサッカー出来ないね」

それを聞いて円堂ははぁーと大きなため息をついた。

「そうなんだよ、こんなに雨が降ってたら流石にサッカー出来ないんだよなぁ」

本当に残念という顔で空を眺める円堂に、きっと明日は晴れるよ、なんて根拠のない返事を返す一之瀬。でも早く晴れてくれないと、円堂のことだからそのうち雨の中でもサッカーをやりだすに違いない。

二人してどんよりとした空を見ていたら、円堂が突然あっと声をあげ一之瀬の前に握手を求めるように手を差し出した。

いきなりのことに一瞬疑問に思った一之瀬だが、差し出された円堂の手を握り返した。

握り返した円堂の手は思いのほか冷たくて、一之瀬は考える間もなく円堂を抱きしめた。これには手を差し出した円堂も流石に驚いたようだ。

「一之瀬?」

急にどうしたんだ?と抱きしめてきた一之瀬に聞けば、より強い力で抱きしめられる。

「円堂の手が冷たいから、こうすればあったかくなるかなって思ってさ」

その言葉を聞いた円堂は一瞬きょとんとしたかと思えば、急にふっと笑いだした。それを感じて一之瀬は首をかしげた。

「円堂?」
「ははっ、ごめん!一之瀬って人の心が読めるのかなって思っちゃってさ」

円堂が笑う度に伝わる振動がくすぐったくて、なんかこういうのっていいなと感じつつ、一之瀬は円堂の言う人の心が読めるという発言を頭の中で繰り返した。

今しがた一之瀬がした行動がもたらしたことを考えれば、答えはすぐに見つかった。

「それってつまり・・・」
「さっき手を出したのは寒いから手を握ってほしかったんだ」

それで手を握り返してきたと思ったら、急に抱きしめられて驚いたと円堂は続けた。やはりそういうことだったのかと一之瀬も円堂につられたように笑い出した。



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