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新しい仲間が増えた。

手下ではない。
協力関係を結んだ別組織と言えば良いだろうか。

土方さんが、刀に手を掛けながら

「手を組むか、この場で殺し合うか。選べ」

なんて脅迫するものだから、一時は一触即発の状態だった。
危うい空気の中、アイヌの女の子のお腹が鳴って、家永さんの「お話の続きは食事の席でされてはいかがでしょうか……」という言葉で衝突を免れたといった感じだ。

「どんどん切って入れちゃって下さい」

「はい」

家永さんの指示で、肉やら腸やらを切って鍋に入れていく。
馬肉と内蔵を味噌で煮込んだ、なんこ鍋というものらしい。
なるほど、モツ鍋のようなものか、と食事の支度をしながら納得した。

出来上がったなんこ鍋を家永さんと二人がかりで食卓へ運ぶ。
何しろ大人数分なので重い。

「なまえ」

続いて、おひつに入れたご飯とお茶碗を運んで行くと、全員にご飯を配り終わったところで土方さんに呼ばれた。

「こちらに来なさい」

「はい」

素直にお側まで歩いて行くと、ひょいと膝の上に抱き上げられてしまった。

「え、えっ」

「椅子が足りない。すまないが、私の膝の上で我慢してくれ」

「は、はい」

そういうことなら仕方がないか…と、おとなしく土方さんの膝の上に収まっていたら、尾形さんと目が合った。

フンと鼻で笑われる。

…いま、絶対馬鹿にされた!
何か言われたわけじゃないけどわかる。
目顔だけで人を煽れる上等兵殿、さすがですね!

「気にするな」

ぷりぷり怒っていると、土方さんが宥めるように私の頬を撫でた。

「ほら、食べなさい」

「はぁい」

土方さんの膝の上で食事を再開する。
土方さんにお茶を差し出すと、頭を撫でられてからお茶を受け取ってくれた。

永倉さんや家永さんが微笑ましそうにこちらを見ている。
牛山さんはニヤニヤしていた。
そんな風に見られるとさすがに少し恥ずかしい。

「なあ、ジイさん」

テーブルの向こう側からこちらの端に座っている土方さんに声が掛けられた。
確か杉元さんだったと思う。

「その、アンタの膝の上のは…」

「ついこの間想いが通じ合ったばかりの情人だが、何か?」

「恋のお話?きかせて…」

えっ…何か、急に乙女ちっくなモードになったんですけど…。
杉元さんは恋愛の話が好きなのだろうか。

「そうだな、何から話せばいいか…出会いは突然だった。私の腕の中に落ちて来たのだ」

「空から!?」

「何もない空中からだ。さすがの私もあれには驚いた」

親方!空から女の子が!という状況だった私達の出会いから両想いに至るまでの経緯を土方さんが語って聞かせている間、杉元さんは瞳をキラキラさせて話に聞き入っていた。

その杉元さんがちらりと尾形さんを見て表情を変える。

「あんたら、その顔ぶれでよく手が組めてるな」

食事をしていた土方さん、永倉さん、尾形さんが杉元さんのほうを見る。

「特にそこの鶴見中尉の手下だった男…一度寝返った奴はまた寝返るぜ」

尾形さん、そこまで言われるような何を杉元さんにしちゃったんですか。

「杉元…お前には殺されかけたが、俺は根に持つ性格じゃねえ。でも今のは傷ついたよ」

どの口で、といった感じで尾形さんが言い返す。
途端に室内はシーンと静まりかえった。

「食事中にケンカすんなよ」

白石さんの言葉が気まずい空気を和らげる。

私の中で白石さんの株が急上昇した。


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