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■家庭教師スナイパーOGATA!


私の家庭教師の先生は凄腕の狙撃手らしい。
なんでも狩猟免許を持っていて、休日になると山に分け入っては鳥や猪を撃っているのだとか。

夏休みを利用して先生の別荘にやって来た私は、そこで先生の狙撃の腕前を初めて目にすることになった。

先生が使うのは、よく猟友会のおじさん達が使っている散弾銃ではなくライフルで、私には全く見えない遠くから獲物を見つけては、一発で見事に撃ち落としてみせるのだから凄いとしか言い様がない。

「ほら」

と、撃ち落とした鳥をずいと差し出される。

「捌いてみろ」

「ええっ、無理ですよッ!」

「なんだ、忘れちまったのか?ちゃんと教えてやっただろ」

「えっ」

心臓がどくんと音を立てて跳ねた。
鳥の捌き方なんて教わっていない。
そのはずなのに。

「しょうがねえ。もう一度教えてやるから、よく覚えろよ」

「ひぇっ」

先生が躊躇なく鳥の首を切り落とす。
それを無理矢理握らされて、背後に立った先生が手取り足取り捌き方を伝授してくれた。
家庭教師って、こんなことまで教えてくれるものなの?
混乱しながらも、いま私は別荘のキッチンに立ち、捌いた鳥を使って食事の支度をしている。
先生は後ろに立って、何故かニヤニヤしながらその様子を眺めていた。

「やっぱりいい眺めだな、俺のためにメシを作ってるお前の姿は。最高にそそられるぜ」

先生が何やらヤバい感じのことを言っているが、無視だ、無視。
先生は時々、私に向かって際どいジョークを言い放つことがある。
だから、もうすっかり慣れっこになってしまった。

「今日のメシはなんだ?」

「オムライスとチキンソテーですよ」

雄みのある渋い見た目なのに、先生は私が作るオムライスが好きなのだと言う。

新鮮な鳥肉を使ったオムライスとチキンソテーは好評だった。

「ごちそうさん。美味かったぜ」

「いえいえ、お粗末様でした」

残さず食べ終えた先生がシャワーを浴びに部屋に戻ったので、私も自分に貸し与えられた部屋に戻った。

先生のお陰で勉強のほうは順調だ。
課題も殆ど終えたし、あとは夏休みを堪能するだけである。

一週間もの間先生の別荘に滞在するなんて最初は迷ったけれど、実際に来てみれば、静かでとても良い所だった。

「待たせたな。次、シャワー使って来い」

「はい、ありがとうございます」

シャワーを浴びてきた直後らしい先生は、ズボンだけ履いて上半身は裸のままだ。
タオルでがしがしと頭を拭いている。
いつも丁寧に撫で付けられているオールバックが少し乱れて、幾筋か髪が額に垂れかかっていた。
その色っぽさにドキンとなる。
初めて目にした先生の身体の逞しさと、オトナの男性特有のその色気にあてられて、赤くなりながら私は急いでバスルームに向かった。

「……はぁ」

温かい湯を浴びながら、まだドキドキしている胸を手で押さえる。
先生に対してこんな気持ちになったのは初めてだった。
今まで先生を異性として意識したことがなかったのだ。
だって、先生は先生だったから。

今日は眠れないかもしれない。

そう思いながら部屋に戻ると、先生がベッドに座って待っていた。

「先生」

「こっちに来い」

ぽんぽんとベッドを叩いて自分の隣に座るよう促される。

「いい匂いだな」

「先生のスケベ!」

「男はみんなこんなもんだぜ」

……なんだろう。
既視感、とでも言うのだろうか。前にも先生とこんな会話を交わした気がする。

「なまえ」

ぼんやりしていると、甘ったるい声で名前を呼ばれ、先生に顎を掬われた。
そのまま先生の顔が近づいてきたので、慌てて手でガードする。

「…おい、こら。なんで邪魔するんだよ」

「な、な、何するんですかッ!?」

「何って、キスに決まってんだろ」

「先生!?」

「先生、じゃねえ。百之助さんって言ってみろ」

「ひゃ…百之助さん?」

そう言った途端、ガードしていた手を握り取られて外され、口付けられていた。

「んんッ、んーッ!」

先生の舌が口の中に入り込み、ねろねろと口腔を舐め回す。
先生の舌が舌に絡みつき、ちゅうっと吸い出されて甘噛みされた。

「少しは思い出したか?」

先生が口を離す頃には、私は完全に力が抜けてぐったりとしていた。

「なに、一度抱かれりゃ思い出すさ。あれだけ可愛がってやったんだからな」

先生が何を言っているのかわからない。
わかりたくない、と意識が理解することをブロックしている。
思い出すなと、頭の中でずっと警鐘が鳴り響いている。

「なあ、なまえ。今度こそ俺の子を孕めよ」

私の唇の端から流れ落ちた唾液を舐め取って、先生が獰猛な笑みを浮かべた。


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