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友達が二泊三日の旅行に行くので、その間彼女のペットのウサギを預かることになった。

「可愛い…!」

「……」

「思ってたよりも小さいなあ」

「……」

「餌ちゃんと食べてくれて良かった」

「……」

「本当に可愛い!」

「…おい、なまえ」

「何ですか、尾形さん」

さっきからずっと何か言いたげな顔で見ていたのはわかっていたけれど、ウサギが可愛くて、つい放置してしまった。
それが気に入らなかったのだろう。
顔に大きく不機嫌ですと書いてある。

大丈夫、わかってます。
この家の主人は尾形さんですからね。
ウサギを預かることに同意してくれたことには心から感謝しています。

「俺にも構え」

と思ったら違った。

ソファに並んで座ってウサギのゲージを眺めていたのだが、隣に座っていた尾形さんが倒れ込んで来たかと思うと、私の膝に頭を乗せて膝枕をする形になった。
私のお腹にぐっと顔を押し付けて言うことには、

「お前は俺の女だろ」

「二十を半ばも過ぎた一人前の男性がウサギと張り合ってどうするんですか…」

「人の女に色目を使うなんざ、可愛くねえウサギだぜ。ウサギ狩りでもするか」

「もう…」

ウサギ狩りだぜ、とライフルを手にウサギを追いかけ回す尾形さんの姿を想像して笑ってしまった。
いや、笑い事じゃないのだけど。

「もう尾形さんはしょうがないなあ」

「笑ってんじゃねえよ。犯すぞ」

ウサギの教育によろしくないので、続きは寝室で。


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