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友人に紹介されて美容室へ行くことになった。
店の名前は『刀剣乱舞』。常連客からは『とうらぶ』の愛称で呼ばれて親しまれているのだとか。

待合室は和のテイスト溢れる、しっとり大人の癒し系。
近所の床屋が行きつけのなまえは少々びびりながら、カウンターで用件を伝えた。

「ここは初めてか?じゃあカウンセリングからだな」

胸元に“薬研藤四郎”というネームホルダーを下げた黒髪の美少年による簡単な聞き取りの後、マイクロスコープで頭皮をチェックされる。
毛根部分に灰色っぽい物体がこびり付いているのが見えた。

「毎日洗っていても、毛根に汚れは溜まるもんだ。落としきれなかったシャンプーも悪影響を及ぼすこともある」

「そうなんですか…」

その後も日頃の手入れ不足などをズバリと指摘され、感心しきりである。

「今日は指名はないんだったな。じゃあ、とりあえず長谷部シャンプーを頼む」

「では、シャンプーをさせて頂きますのでこちらへ」

“へし切長谷部”と書かれたネームホルダーを下げた青年に案内され、なまえはシャンプー用のブースに入った。
明るい店内とは違い、照明が落とされたブースの中は別世界のようだ。
ドキドキしながら椅子に座ると、手早くケープが巻かれた。

「椅子を倒します」

椅子を倒され、顔にガーゼを掛けられる。
ガーゼに何かスプレーされているらしく良い香りがした。

「熱くありませんか?」

「大丈夫です」

まずは指で毛先をほぐしつつ、やや熱めのシャワーでゆっくりシャーッと髪が濡らされる。
耳の中に湯が入らないよう、しっかり手でカバーしながら流し、後頭部を軽く持ち上げ、項から頭頂にかけて髪を撫で上げながら濡らしていく。
後頭部も掌で湯を溜めながらチャプチャプコプコプ。
これだけでも充分気持ち良いのに、頚椎にそって揉み揉みぐいぐいと指圧され、ぞわぞわとした快感が背筋を駆け抜ける。

そうしてたっぷりと濡らした後は、フルーティな香りのするシャンプーを丁寧に四方に伸ばされ、頭皮をゴシゴシ。
全く痛くないが、指先は力強く、生え際、こめかみ、後頭部、側頭部と縦横無尽にゴシゴシ、シャカシャカされる。
そして手の平で輪っかを作りググーッと締め上げらた。
開放された瞬間、頭皮の血液がぷわーっと流れ落ちる。
こめかみも再度揉まれ、勿論首筋も肩も揉まれ、じわじわと血流が駆け巡っていくのが分かる。
すっかりうとうとしていたら、気付くとすすぎに突入していた。
後頭部と耳の裏は特に念入りにシャワシャワと洗い流され、指先で髪を掻きあげ、手櫛で整えていく。

「痒いところはありませんか?」

「はい…」

ぽやぽやした口調で返事をするが、思考は半ば夢の中だ。

丁寧にすすいだ後は、リンス。
細いノズルの付いた容器で、前頭葉から頭頂部にかけてチュルルーッと冷たいリンスを掛け、軽く髪全体にのばしたと思ったら、再びマッサージ。
それが終わるとすぐにすすぎが始まった。

終了後、髪全体にザッと指を通して水気を切り、すぐにフワフワのタオルで頭をくるんでくれる。
顔のガーゼが取られ、力強い手に後頭部をぐいっと支えられつつ「では、起こします」の声で椅子が上がり起こされた。

余韻にボーッとしていると、頭をくるんでいたタオルが優しくほどかれ、タオルドライ開始。
髪をタオルで丁寧に拭き上げながら、念入りにマッサージ。
指先でカシカシと、時には頭皮を掴むようにゴシゴシと。
額の生え際やこめかみ、もみあげ、耳の後ろへの指圧も、タオルドライしつつじっくりと数回ずつ行われた。
最後に、項をぐいーっと揉み込み、両方の耳の中をタオルでくるくるっと拭いておしまい。
眠気でヨタヨタしつつシャンプー台を離れ、鏡の前の席へ。

今度はドライヤーだ。
鏡で仕上がりを確認しつつ、丁寧に乾かしてくれる。
頭頂部はワサワサと、後頭部は手櫛で逆毛を立てるようにしながら、程よく温かいドライヤーの風を髪と頭皮にフワフワ当ててもらう。

ドライヤー終了後、いい感じにほんわか温まった髪と頭。
最後に仕上がりを確認し終えた長谷部は、鏡越しになまえを見つめながら、空気を含んで膨らみ気味な髪の毛全体を落ち着かせるように両手の平で頭を包みこみ、二度三度と頭頂部から下へと撫でつけてブローを締めくくった。


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