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お風呂で長谷部に洗われている内に、つい勢いで致してしまった後。

ふかふかのタオルで全身を手早く拭かれ、きちんと浴衣を着せられた私は、長谷部に抱き上げられて運ばれていた。

我ながら甘やかされていると思う。

長谷部は優秀な近侍であると同時に、とても頼りになる恋人だった。

既に皆は寝静まっている時分だ。
静かにしなければいけないのは当たり前なのだが、ひと一人を抱き上げたまま足音をひそめながら歩けるなんて、長谷部は凄い。
ぎし、ぎし、と鳴ってもおかしくないのに、殆ど音も立てずに離れに続く廊下を進んでいく。

やはり付喪神だから、ヒトとは違うのだろうか。色々と。
そう思うと、先ほどまで長谷部を受け入れていた場所がきゅんとなった。
交わってはいけない存在と激しくまぐわってしまった背徳感と、そんな存在に深く愛されているという優越感。

廊下に面した障子を開ければ、そこは私が普段過ごす部屋で、その更に奥にある襖を開ければそこは寝所だった。
敷かれた布団の上に下ろされると同時に口付けられる。
最初は触れるだけ。
それから、唇を舐めた舌がぬるりと中に入ってきた。
ゆっくりと、かつ執拗に口内を蹂躙する舌は熱く、まだ埋み火が残っていた身体はそれだけであっという間に燃え上がりそうになる。

「長谷部、だめ…」

息継ぎをさせるべく一度唇が離れた隙に、何とか言葉を紡ぎ出したが、今度は首筋に唇を這わされ、浴衣の上からやんわりと胸を揉まれてしまう。
裾を割って太ももを撫で上げる大きな手の平の感触に息をつめた。

ふ、と笑んだ唇が落とされ、優しいキスに身体から一気に力が抜ける。

「長谷部…」

「申し訳ありません」

大して申し訳なく思ってなさそうな顔で謝罪の言葉を口にした長谷部が、浴衣の乱れを整えてくれた。
何故か嬉しそうに微笑んで。

「でも、こうすれば、貴女の身も心も俺だけを求めて、夢の中も俺の存在で埋め尽くされるでしょう?」

そうなれば貴女を独り占め出来る。

そう笑って、長谷部はもう一度私に口付けた。
深く、己の存在を刻み付けるように。

「なまえ様……」


──そして。


「……主?」

ハッとして我にかえった。
いけない。ぼんやりしていた。

「ごめん、大丈夫」

庭から鳥のさえずりが聞こえてくる。
穏やかな朝だ。
長谷部は傍らに座したまま、私の指示を待っている。
私は改めて手元の紙に目を落とした。
政府からの手紙が来ていたのを長谷部が持って来てくれたのだ。

「審神者を集めて定例会をやるみたい。近侍を連れて来るように書いてある」

「では、俺をお供にお連れ下さい」

「うん、一緒に来て」

「主命とあらば、喜んで」

恭しくこうべを垂れて長谷部が答える。
それから彼は、妙に澄ました顔で「ところで」と言った。

「昨夜のことを思い出しておられたのでしょう。もう濡れているのではありませんか」

私の近侍は優秀過ぎて時々困る。


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