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試着室のドアが開いて彼を見た途端、思わず見惚れてしまった。

それは店員さんも同じだったようで、顔を赤くしている。
しかし、そこはやはり有名ブランドのベテラン店員。
すぐに笑顔で「とても良くお似合いですよ」と褒め言葉を送ってくれた。

その通り。
とても良く似合っている。
びっくりするくらいかっこいい。

「どうかな?」

スーツの上にブランドもののコートを着た光忠は、私の感想を求めてきた。

「凄くかっこいいよ」

「ありがとう。お世辞でも嬉しいよ」

「本当の本当にかっこいいよ」

日頃様々な男性を見慣れていて目の肥えた店員さんも、これにはガッツリ同意を示してくれた。

「じゃあ、このまま着ていきますのでお会計お願いします」

カードで支払いを済ませ、光忠と一緒に店を出る。
それなりにお高い品だったが、後悔はない。

「なまえちゃん、ありがとう。大事にするよ」

「喜んで貰えて良かった」

惚れた男に貢ぐ女の人の気持ちが少しだけわかった気がした。
光忠になら幾ら貢いでも惜しくはない。

「じゃあ、行こうか」

「うん」

光忠の腕に腕を絡ませて、目的地に向かって歩き出す。

「寒くない?」

「大丈夫。こうしていると温かいよ」

目的地はすぐに見えて来た。

「わ、凄い!」

「綺麗だね」

銀座のイルミネーションだ。
青と金色にきらびやかに彩られた並木道を、光忠に寄り添って歩いていく。
寒さも気にならないほどの美しさに、しばし言葉を失ったまま。

光忠にエスコートされて、予約していたレストランに入ると、すぐに窓際の席に案内された。
案内してくれたマネージャーがテーブルに置かれていた予約席のカードを胸ポケットにしまう。
光忠が引いてくれた椅子に腰を降ろすと、光忠も向かいに座った。

「良い席だね」

「うん、早めに予約しておいて良かった」

刀剣男士を本丸の外に連れ出せるのは、基本、審神者と近侍が集まる会合の時のみ。
しかし、戦績によっては“ご褒美”として外出が許可されることもある。
今がそうだ。

このクリスマスデートを実現させるためにはかなり苦労した。
でも、光忠との時間のためなら頑張れた。

「メリークリスマス、なまえちゃん」

「メリークリスマス、光忠」

シャンパンの入ったグラスをカチンと触れ合わせて乾杯する。

クリスマスディナーはとても豪華で美味しく、満足のいくものだった。

「これ、僕からのプレゼント」

「えっ、私に?」

「もちろん。開けてみてごらん」

綺麗にラッピングされた箱を開けると、ボックスの中に輝くリングが入っていた。

「光忠、これ……」

光忠はリングを取り出すと、私の左手の薬指にそれを滑り込ませた。

「愛してるよ、なまえちゃん」

「うん…うん、ありがとう」

「泣かないで」

「だって、光忠がぁ…」

「僕のせいなら仕方ないね」

ぽんぽんと優しく頭を叩かれて、髪を撫でられる。

「命の限り君を大切にし続けるから、僕だけのものでいてほしい」

「私は光忠のだよ」

「ありがとう。最高に幸せだよ」

「私も幸せ」

手袋を外した光忠の手が私の手を包み込む。

大きくてあたたかい手。

今すぐ光忠に抱きつきたくなるのを我慢するのは至難のわざだった。


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