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木炭に玉鋼、冷却材、それに砥石。
資材は幾らあっても持て余すということはない。
逆に言えば、枯渇するなどあってはならないことだ。
常に余裕がある状態が望ましい。

「そろそろ遠征部隊を出そうかな」

資材の在庫数をチェックして呟くと、長谷部が素早く反応した。

「どちらへ?」

「鎌倉か室町時代あたりがいいと思うんだけど」

「では、どうか俺にお任せ下さい」

「第三部隊を派遣しようと思ってたんだけど、長谷部がそう言うなら」

「はい、お任せ下さい。必ず最良の結果を主に」

そう言って長谷部が出発して三日。
帰還した彼と部下達は大量の資材を持ち帰ってきた。
今回の成果は、木炭が350に、玉鋼が200、冷却材が100と、砥石が250。
オマケに小判箱まで持って帰って来た。
遠征は大成功だったと言える。

「ありがとう、長谷部、お疲れさま」

「結果を出すのは当然です」

すべては主のために。
そう胸を張る彼は誇らしげだ。実に頼もしい。

「ですが、間に合って良かった」

「え?」

「お誕生日おめでとうございます、なまえ様」

これを、と渡されたのは、紫色の布に丁寧に包まれていた柘植の櫛だ。

「は、長谷部…」

「俺の気持ちです。受け取って下さいますか?」

やはり、意味をわかった上での贈り物だった。
赤くなって動揺しつつも、櫛を受け取り、大事に胸に押し抱いた。

「ありがとう…大事にするね」

「ありがとうございます。俺も、必ず大事に致します」

座していた長谷部が腰を浮かせる。
近づいてくる整った顔を見て、そっと目を閉じた。
優しく唇を重ねられて胸がざわめく。

「お慕い申し上げております、なまえ様」

「私も…大好き」

たちまち口付けが深くなる。
取り落としてはいけないと、慌てて櫛を膝の上に置いた。
それを確認した長谷部が両手をとって指を絡める。

「んん…長谷部…」

すっかり蕩けてしまったこちらの様子を見て、長谷部は少し笑った。
そして、耳元に唇を寄せて囁いた。

「祝言はいつ挙げましょうか」と。


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HappyBirthday to you


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