「ゼクシィ…ですか?」 「そう。これから結婚するカップル向けの結婚情報誌だよ」 長谷部に手渡したのは、巷で有名な結婚情報誌だ。 このご時世に未だに紙媒体なのはオマケが付いているからである。 充実した付録を目当てに購入する女性も多いらしい。 めでたく祝言を挙げることになった私達だが、やはりウェディングドレスへの憧れは捨てきれなかった。 なので、こちらは形ばかりだけど教会でも式を行うことにしたのである。 「長谷部のタキシード姿、楽しみだなあ」 カソックがあれだけ似合っている長谷部なのだから、タキシード姿もさぞかしかっこいいだろう。 「俺はあなたのウェディングドレス姿が楽しみです。世界一美しい花嫁になるでしょう」 「世界一は言い過ぎだよ。でも、長谷部のお嫁さんになれて嬉しい」 「主……俺は世界一の幸せ者です」 「長谷部ってば。それは私のほうだよぉ」 「心よりお慕い申し上げております、主」 「長谷部…」 私達は人目も憚らずイチャイチャした。 といっても、ここは離れにある私の部屋なので他の刀剣男士はいないのだが。 おっと、いけない。 わざわざゼクシィを取り寄せた目的を忘れるところだった。 「これね、ウェディングドレスのカタログが付いてるの。長谷部に選んでほしいなあって」 「俺が意見など、とてもとても。主の欲しい物を買うと良いでしょう」 「もう、またそんなこと言って。自分で選べないから長谷部にお願いしてるんだよ」 「そういうものですか」 「そういうものなの」 長谷部は納得したのか、ドレスのカタログをぱらぱらと捲った。 「主ならばどれもお似合いになると思いますが」 「ありがとう。でも全部は着れないから、長谷部が一番好きなのを選んでね」 「わかりました、お任せ下さい」 真剣な表情でカタログに見入る長谷部をじぃっと見つめる。 元から男前だったけど、極になってから雄みが増した気がする。 そんな長谷部のお嫁さんになれるなんて、私はなんて幸せなんだろう。 「主、俺はこのドレスが良いと思うのですが、いかがでしょう」 「うん、どれどれ?」 長谷部が指差しているのは、ドレスの下にパニエを履いてボリュームを出したプリンセスラインと呼ばれているタイプのものだった。 そうか、長谷部はこういうのが好みなのか。 「じゃあ、これにするね」 「よろしいのですか?」 「うん。長谷部が選んでくれたんだもの。私もこれがいい」 「ありがとうございます」 「こちらこそ、ありがとうだよ」 「…主」 長谷部に抱き寄せられたので、その逞しい胸板に頬をすり寄せて甘える。 ああ、いい匂い。 いい男は本当にいい匂いがするんだね。 ちょっと変態っぽいけど仕方ない。 長谷部がかっこいいのが悪いのだ。 「指輪はどうなさいますか」 「そうだね。やっぱりお揃いで欲しいよね」 「何かお好きなデザインはありますか」 「うーん、どうしよう」 「こんな時のためのカタログです」 長谷部にゼクシィを渡されて、なるほどと納得した。 これには指輪の一般的なデザインも載っている。 「長谷部…長谷部」 「主…俺のだけの主」 私達はちゅっちゅしながら指輪のデザインを選んだ。 ああ、本当に幸せ。 |