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「明けましておめでとう」

「明けましておめでとうございます」

零さん手作りの年越し蕎麦を食べながら、テレビで大晦日の特番を見ている内に日付が変わった。
私も零さんも先にお風呂を済ませていたので、私はもこもこパジャマだし、零さんは上下共白のスウェットというラフな格好だ。
それでもかっこいいのだから、この人はずるい。

スマホには新年の挨拶のメールやラインがたくさん来ているのだろうが、今は彼との時間を優先したいから、申し訳ないけど暫く放置のままでいこうと決めた。
零さんも同じ気持ちなのか、スマホの電源を切っているようだ。

「今年もよろしく頼む」

「今年もよろしくお願い致します」

零さんが日本酒の入ったグラスを掲げたので、私も麦茶の入ったグラスを軽く触れ合わせて乾杯した。

「なまえ、少し飲まないか?」

「じゃあ、少しだけ」

麦茶を飲み干したのを見計らって零さんにそう言われたので、私は空になったグラスを差し出した。
零さんが日本酒を注いでくれる。
少しだけといったのにグラスの半分ほどを満たした液体に、ちょっと怯んでしまった。

「酔ったら俺が介抱するから心配いらない」

「零さんにそんな醜態見せられません」

「俺は見たいな、酔ったなまえ。知ってるか?女性は酔うと蕩けて具合が良くなるらしい」

「零さん、セクハラです」

「試させてほしいんだが」

「ダメです」

「じゃあ、本当に少しだけでいいよ」

「それなら…いただきます」

恐る恐るグラスに口をつける。
せっかく零さんが注いでくれたお酒だ。
それにお正月だし、お目出度い席で飲まないのも失礼にあたるだろう。

こくん、と飲むと、驚くほど飲みやすかった。
全くお酒特有の癖のある味がしない。

「飲みやすいだろう?」

「はい、こんなお酒もあるんですね」

「ああ、作り方から違うんだよ」

零さんは詳しく製法について語ってくれた。
なるほど、と感心しながらグラスに入ったお酒を飲む。

「ん………あれ?」

何だか身体が変だ。
妙に火照っているというか、身体が熱い。

零さんを見ると笑っていた。
バーボンの時の笑い方に似ていて、ドキッとする。

「それ、飲みやすいけど度数が高いんだ。それだけ飲んだらもうまともに動けないだろう」

「!?」

「さて、なまえ。このまま炬燵でするのと、ベッドに行くのとどっちがいい?」

「零さん…ひどいです!」

「ひどくないさ。可愛い恋人と愛し合いたいと思うのは普通だろ。それで、どっちにする?」

「…ベッドに連れて行って下さい」

観念して両手を差し伸べると、零さんは心得たとばかりに私を抱き上げた。

「良い子だ。素直な子にはご褒美をあげないとな」

結局、お昼過ぎに目覚めた私を甲斐甲斐しくお世話をしてくれた上に、ベッドまで御節料理を運んで来てくれた零さんは飴と鞭の達人だと思う。


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