「蘭ちゃんって隠れ巨乳だよね」 「ぶっ…!」 コナンくんがオレンジジュースを噴き出した。 「大丈夫?」 「う、げほっ…!」 ハンカチを差し出せば、彼は首を振って、自分のポケットからハンカチを取り出して口元を覆った。 子供らしい丸みを帯びた顔が赤い。 想像しちゃったのかな?ごめんね。 「蘭さんてそうなんですか?」 「安室さんも興味あります?」 「いえ、コナンくんが興味がありそうなので聞いておこうかな、と」 ねえ、コナンくん、とコナンくんを笑顔で見下ろす安室さんは鬼だ。 コナンくんを動揺させて楽しんでいる。 「べ、別に、蘭姉ちゃんのことなんて……」 「服を着てるとわかりにくいんですけど、脱いで水着とかになると巨乳なんですよね。こう、ばいーんって感じで」 「なるほど。そうなのかい?コナンくん」 「し、知らないよ!」 「まあまあ、それくらいで許してあげましょうよ」 「梓さん、優しい」 「動揺するコナンくんなんてなかなかお目にかかれませんよ。もう少しいいじゃないですか」 「安室さん、コナンくんに恨みでもあるんですか?」 「ふふ、まさか」 梓さんの言葉に、安室さんは意味ありげな笑みを浮かべた。 「彼には借りを作ってばかりですよ。この前も、」 「も、もういいでしょ!僕、帰る!」 「あはは、ごめんね、コナンくん」 「なまえお姉さん、安室さんのこと好きなら苦労するよ。安室さん、すっごくめんどくさい人だから!」 仕返しとばかりにコナンくんが私をジト目で見る。 「うん、知ってる」 コナンくんは目を丸くして、それから呆れたようにため息をつくと、梓さんに代金を渡してポアロから出て行った。 「物好き」という言葉を残して。 「なまえさん、安室さんが好きなんですか?」 梓さんが好奇心を剥き出しにして早速食いついてくる。 コナンくんには優しかったけど私には容赦ないんですね。 「他のお客さんと一緒ですよ。安室さん目当てで通ってるミーハーな客です」 「えっ、そうなんですか?僕はてっきり本気で僕のことを好きなんだと」 「本人の前でそんなこと言うわけないじゃないですか」 「それもそうですね。……残念だなぁ」 にこにこと微笑む安室さんは、相変わらず何を考えているかわからない。 あなたは本当は誰なんですか、と聞いたらいつかちゃんと答えてくれるだろうか。 結局は私もコナンくんと同じなのだ。 叶わない恋に胸を焦がしているのに、それに気づかないふりをしている。 「安室さん、今度シフトがお休みの時にデートして下さい」 「おや、積極的ですね。でもそういうの嫌いじゃないですよ」 これも嘘か本当かわからない。 それでも私はあえて笑顔を作って、安室さんにデートの約束を取り付けた。 ひとときの甘い夢に浸るために。 |