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「イルミネーション綺麗でしたね」

愛車のハンドルを握る安室さんにそう言えば、「そうですね」と優しい声で相槌がかえってくる。

「僕は貴女ばかり見ていましたけど」

「えっ」

「綺麗でしたよ、とても。見とれてしまうくらいに」

「あ、安室さん」

「そんな反応を返してくるところも可愛らしい」

「も、もう無理です……降参」

はは、と楽しそうに笑って安室さんは車を駐車場へ入れた。



「さあ、どうぞ」

「お邪魔します」

MAISON MOKUBAにある安室さんの部屋に入るのはこれで二度目。
最初の時は、安室さんの家!ということでどんな暮らしぶりをしているのか気になってしまい、辺りをキョロキョロ見回さないように意思を総動員する必要があった。
今回は二度目ということもあり、落ち着いて……いや、やはりドキドキしてしまってそれどころではない。
だって、安室さんの部屋だから。

「お茶を入れて来ますから、適当に寛いでいて下さい」

「は、はい」

通されたのは和室だった。壁際に大きなローベッドが置かれている。
ここに入るのも二度目だ。
その時はこのベッドの上で……。

私は心を無にする努力をしながらベッドを背にしてテーブルの前に座った。
視界に入らなければ大丈夫だろう。

「紅茶で良かったですか?」

「はい、ありがとうございます」

安室さんがキッチンから戻ってきて、テーブルの上に紅茶のカップを二つ置く。
時間が時間なので、お茶うけは無しだ。
ぎくしゃくとした動きでカップを持ち上げ、紅茶をいただく。

ふと気付くと、安室さんがじっとこちらを見つめていた。

「安室さん?」

「いえ、無防備すぎるなと思って」

「そんな……」

「意識はしてくれているみたいですが、それではまだ不十分だ」

安室さんが立ち上がり、テーブルを回って私のところまで歩いてくる。
カップを置くと、その手をやんわり握られた。
そして、ふわっと身体が持ち上げられたと思ったら、次の瞬間にはベッドの上に押し倒されていた。
上から覗き込んでくる安室さんの顔が影になっていて何だかちょっと怖い。

「こういうことですよ」

「あ、あのっ、安室さ、んっ」

安室さんにキスをされて語尾が甘く跳ね上がる。
安室さんに舌を絡め取られ、ぢゅうっと吸われて、閉じた目の裏側がチカチカした。

安室さんがゆっくりと唇を離す。
その端麗な顔立ちには凄艶な微笑が浮かんでいて、思わず息をのんだ。

「それで……貴女はいつまで僕のことを『安室さん』と他人行儀に呼び続けるつもりなんです?」

ちゃんと本当の名前教えましたよね。

甘く囁かれて、誘われるまま私は彼の名を呼んだ。

「…………零さん」

「良く出来ました」

満足そうに笑った零さんに再び口付けられる。

「いい子だ……ご褒美をあげよう」

甘くて熱い夜が始まった。


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