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「おはようございます、なまえさん」

目が覚めると、甘い微笑みを浮かべた安室さんの花のごときかんばせがすぐ目の前にあった。
一瞬状況が理解出来ず、それから昨夜の出来事を思い出して真っ赤になった。

そうだ。昨日は、安室さんと……。

掛け布団から覗く褐色の上半身から首までの完璧なラインだとか、片肘をついて私を眺めている姿はまるで天才彫刻家が生み出した彫像のような美しさだとか、色々と思うことはあるけれど、とりあえず眩し過ぎて直視出来ない。

思わず逃げ出そうとした私を安室さんがやんわり捕まえる。

「もう行ってしまうんですか?」

「えっと、シャワー浴びたり、支度しないと」

「そうですよね。でも、もう少しだけこのままでいさせて下さい」

安室さんに頬擦りされ、頬にキスをされてしまうと、それ以上抵抗は出来なかった。

「貴女はあたたかいですね」

私を抱き締めたまま安室さんが言った。

「長い間、人肌のあたたかさなんて忘れていました」

前の彼女さんのことだろうか、と考えたのが伝わったのか、安室さんはフッと笑って私のうなじに唇を推し当てた。

「違いますよ。親友のことを考えていたんです」

「安室さん、お友達がいたんですね」

「あれ?さりげなくディスられてます?ひどいな」

「だって、安室さん、全然プライベートな話をしないから」

「……幼馴染みだったんです。子供の頃からの長い付き合いで、側にいるのが当たり前の存在でした」

昔を懐かしむようなその言い方から、何となく、いまはもうその人はいないんだなとわかってしまった。

「私は安室さんの側にいます。これからもずっと」

「ありがとう。その言葉だけで、僕はまだ闘える」

一度ぎゅっと強く抱き締めてから、安室さんは私を離してベッドを出た。
ズボンを履いて、きちんと畳んであったニットを着込み、私の頭を撫でる。

「僕が朝食を作りますから、その間にシャワーを浴びてきて下さい。僕がまた貴女をベッドに引きずり込んでしまわない内に」


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