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「眠れないのか?」

起こさないようにと気をつけていたはずなのに、気配でわかってしまったらしい。
さすがと言うべきか。

「ごめんなさい」

「謝ることはないさ。誰にでもそんな夜はある」

優しい声に肯定されて泣きそうになった。
いったいどれほどの人達が彼がこんなにも優しい人なのだと理解してくれているのだろう。
冷静沈着なスナイパーとしてではなく、一人の男性としてのこの人の優しさに触れることが出来て、私は本当に幸せ者だ。

「少し待っていろ」

そう言い置いて赤井さんは一人キッチンに向かった。
ほんの数分で戻って来た彼の手にはマグカップが。

「蜂蜜を入れたホットミルクだ。気休め程度だが、飲めば少しはリラックス出来るだろう」

「ありがとうございます」

赤井さんからマグカップを受け取り、軽く吹き冷ましてから口にする。
ほんのり甘い温かいミルクが喉を通ってお腹に落ちて行くと、お腹を中心に身体がぽかぽかと熱を持ったように感じられた。

「飲んだな。よし、おいで」

ホットミルクを飲み終わると、赤井さんは私を抱き上げたまま横になった。
赤井さんの体温に包まれて、あたたかい腕に抱き締められて、まるで夢のようだ。

「君が眠るまでこうしていよう。大丈夫だ、今度は必ず眠れる」

大きな手の平で優しく背中をさすられたからか、それとも、ホットミルクの効果か、とろりと意識が蕩けそうになる。

「おやすみ」

赤井さんの心地よい美声が直に身体に響いて、私はそっと目を閉じた。
とろとろと身体を侵食していく眠気に逆らわずに身を任せる。

蜂蜜入りのホットミルクよりも甘くあたたかい、大好きな恋人に守られて。


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