潜入捜査を終えた零さんにプロポーズされた時は天にものぼる心地で、しばらくはふわふわした幸せな気持ちに浸っていたのだが。 「それ、ハリー・ウィンストンの婚約指輪ですよね!」 と園子ちゃんに指摘されて血の気が引いていくのを感じた。 「ハリー・ウィンストンってあの?めちゃくちゃお高いセレブ御用達の?」 「えっ、なまえさん気付いてなかったんですか?」 「知ってたら買うの止めたよ!どうしよう。こんな高いものもらえない…」 「いや、貰ってくれ」 「零さん…!」 「返却不可だよ」 「うう…一生大事にします」 「ああ。一生着けていてくれ。俺のものだという証に」 園子ちゃんがヒューヒュー冷やかしてくるが、私はそれどころではなかった。 零さんが安室透を演じる必要がなくなって、素の自分を出せるようになったことは嬉しい。 喜ばしいことである。 ただ、私のために散財するようなまねはしてほしくなかった。 零さんが命がけで稼いだお金なのだから、私ごときに無駄遣いさせるわけにはいかない。 それなのに。 「とても良く似合っているよ」 「ありがとうございます。でも…」 「ん?気に入らなかった?」 「いえ、そうじゃなくて…やっぱりドレスはレンタルでいいんじゃないかなって」 「一生に一度のことだからこそ、君には俺の納得のいくものを着て欲しいんだ。俺の我が侭だよ」 「零さん…」 「降谷様、ティアラはいかが致しますか?こちらはデザイナーの一点物で」 「ああ、これにしよう。なまえもこれでいいだろう?」 「え、えっと…」 「式に招待するのはいつもの面々だけど、料理はとびっきりのものを提供したいな」 「それでしたら、こちらのオプションでシェフを貸し切りで調理出来ますが」 「じゃあ、そうしよう。なまえ、いいかい?」 「ふえぇ…!」 零さんとウェディングプランナーさんによって、着々とこれ以上ないほど豪華な結婚式になりつつある! 新一くんに相談したら、 「降谷さんの愛が重いのは今に始まったことじゃないだろ」 と呆れられてしまった。 自分にそんな価値があるのだろうかと悩むものの、毎日これでもかと愛情表現をされているため、愛されていると実感せずにはいられない。 「愛しているよ、なまえ。一生君を離さない」 愛され過ぎて怖いです、零さん。 |