人間、死ぬ気でやれば何とかなるものだ。

虫かごの中のおびたたしい量の『金になる虫』を見て、私はやり遂げた感を感じていた。
南の島にこもり、バナナの木や椰子の木に寄って来る虫を片っ端から捕獲しまくり、現在に至る。
お陰で気分が晴れてすっきりした。
それに、これだけの虫を売り払えば当分お金には困らずに済むだろう。

村に戻るためのボートに乗り込みながら、出発前に幸村さんと交わした会話をぼんやりと思い出す。
泣きはらした目で急に引越してきた子を放っておけないよ、と彼は優しく微笑んだのだ。


「…私、仲良くなるとすぐ調子に乗って勘違いしちゃうみたいだから、あまり馴れなれしくしないようにしようと思って…」

「うん、事情は分かった。でもそういうことなら遠慮なんてしなくていいね」

「え?」

「俺はキミともっと仲良くなりたい」

「それは……その…」

「うん、もちろんそういう意味で」

幸村さんは笑っていたけれど、目は真剣だった。

「まずは友達としてでいいから、もっと距離を縮めていきたい。そしていずれは恋人になれたらいいなって思ってるよ」


数日の内に色々な事がありすぎて頭の中が混乱している。
少し整理する時間が必要だ。

ボートを岸に係留し、溜め息をつく。

ふと影がさして、なんだろうと顔を上げると、そこにはよく知っている人が立っていた。
しまったと思った。
ぼんやりしていたから気付かなかったのだ。

「赤司、くん…」

村へ続く道を塞ぐように、赤司くんが私の目の前に立っていた。



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