窓の外では、ちらちらと小雪が舞っている。
窓が曇っているところを見ると、外はかなり冷え込んでいるのだろう。
しかし、この家の中はとても暖かく、素肌に毛布を羽織っただけの格好でも寒くない。
それどころか、つい先ほどまで激しくまぐわっていたため、身体のそこかしこにはまだ熱が残っていた。

実は、ここがどこなのか、正確にはわからない。

何故なら、一服盛られたせいで、車で運ばれる間ずっと眠っていたからだ。

「今日は冷えますから、これで温まって下さい」と、あの微笑みでボトルに入った紅茶を勧められて断れる女がいるだろうか。

目覚めた時には、赤屍のセーフハウスのひとつだというこの森の中の一軒家に運び込まれた後だった。

「風邪をひきますよ」

後ろから腕の中に閉じ込めるようにして抱き締められる。
自分よりも大きな身体に包み込まれるのは不思議な安心感があった。

「ケーキが焼けたのでお持ちしました」

言われて気がつく。
ここへ来てから豪華なクリスマスディナーを振る舞われたのだが、そういえばケーキはなかった。

赤屍に抱き上げられて、ベッドに降ろされる。
彼はしっかりと毛布で包み込むようにしたなまえに、恭しくケーキの乗った皿を差し出した。
そうして、フォークでケーキを切り取って口元まで運ばれる。

「はい、あーん」

あーんと口を開けると、ケーキを食べさせてくれた。
今まで食べたどのケーキよりも美味しく感じた。

「美味しい……」

「それは良かった。お口に合ったようで安心しましたよ」

「赤屍さんの作るものは、いつもとても美味しいです」

「愛がこもっていますからね」

小さく笑った赤屍に口付けられる。
軽く啄むようなキスをしてから、彼はなまえの首にネックレスを着けた。
ひやりとして少し寒く感じたが、すぐに体温に馴染んで気にならなくなった。

「これ血赤珊瑚ですか?」

「いえ、私の血を特殊な加工を施して固めたものです」

いつでも貴女が私を感じていられるように。

そう言って笑った赤屍に、背筋がぞくりと寒くなる。
そして、なまえにはどうしても確認しなければならないことがあった。

「あの……明日には帰してくれますよね……?」

恐る恐る尋ねてみる。

しかし、返ってきたのは謎めいた微笑みだけだった。

「メリークリスマス。楽しい夜を過ごしましょうね、なまえさん」


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