ビーチに行くと、ちょうど海岸線に夕陽が沈んでいくところだった。 サンセットビーチと名付けられた絵画のような美しい風景に思わず息を飲んだ。 「少し歩こうか」 零さんに手を引かれて波打ち際を歩き始める。 「こういうの夢でした」 「俺もだ。いつかこうして君と波打ち際を散歩してみたいと思っていた」 「零さんもロマンチストなんですね」 「どうかな。俺はリアリストだと思うけど」 「確かに、赤井さんのほうがロマンチストかも」 「そこでその名を出すということは、俺に対抗してポエムのひとつでも言ってみろということかな」 「零さん、頑張って!」 「残念ながらそこまでロマンチストじゃない」 「ちょっと赤井さんに電話してみますね」 「こら」 スマホを取り出すふりをすると、零さんに怒られた。 「せっかく君を独占しているのに、他の男の名前を出すのは無しだ」 「はい、ごめんなさい」 二人で笑いあって波打ち際を歩いていく。 夕陽は完全に沈みきって、夜空にはキラキラと星がまたたいていた。 「赤井の名前を出したこと、今夜ベッドの上で後悔させてあげるよ」 星の光を映して零さんの瞳が輝いている。 どうやら、今夜は相当な覚悟が必要なようだ。 |