泥剣団とかいう傭兵の集まりの話。主人公は孤児? あまり人と関わらずに育った成人男性。不愛想と育ちの悪さで口も悪く行動も横暴。後々が面倒な事になるので人を無闇に傷つけることはしない。
 ファンタジー世界。古代ローマっぽい、土と岩壁の街に派遣されてきた泥剣団は、最近出没した害獣(モンスター)を討伐のために街の人たちの要望をきいたり助けたりしながら身を置いていた。
 主人公の男は不愛想で人と関わるのを極力避けていたけども、泥剣団がとっている宿の主人である老婆が何かと主人公を気にかけていて「ちゃんとご飯は食べてるのかねぇ」「傭兵さんは身体が資本って言うじゃない。もっとお食べ」だとか、他人の距離を保ちながらも親身になって世話をしていた。
 主人公は女にも興味が無くて(後々が面倒だから)、金も名誉もどうでもよくって自分はなんのために生きてるのか分からないけども、死ぬのは怖いからとりあえず生きているっていう人間。
 老婆と会話していくうちに、家族とはこんなものなのだろうかだとか、色々と考えながら老婆が困ってたら助けたり、他の泥剣団の人間が街の人間の手助けをしているのを見て手伝ったりするようになった。

 傭兵団が派遣されてから長く経って、それでもモンスターたちは数を減らさずむしろ増えていることに疑問が出る。街の近くに巣窟があるんじゃないかっていう話になって、泥剣団が調査すると街の下を走る水路にモンスターが住み着いていることが判明。それらの討伐に向かうことになる。
 そのことを街の偉い人に伝えると、偉い人は何故だか嬉しそうにして「お願いします」と言う。
 水路の地図を貰って内容を確認すると、迷路のようになっていた。横に広く、階層が分かれていてダンジョンのようだった。

 十分な準備をしてから討伐に向かうという日に、街の人たちが泥剣団の身を案じたり、激励したり、生きて帰って来いよだとか帰ってきたら飯を食いに行こうだとか、悲壮感は無く皆笑顔で泥剣団を見送る。
 泥剣団の傭兵たちは、街の人たちのためにもやってやるか、って感じで向かう。
 主人公は老婆に何かを言おうともごもごする。老婆をそれを見て笑って「怪我をしないで帰っておいでね」って言って主人公はそれに対して「…おう」と、口籠ってしまったことに対する恥ずかしさとか、こうやって人から案じられることが無かったことによる気恥ずかしさにそっぽを向く。

 泥剣団はダンジョン攻略に行く。
 水路は想像してたよりも明るかった。
 両壁は白で、誰かが毎日掃除をしているのか汚れがほとんど見られない。人が歩くための道幅も確保されており、天井には蛍光灯に似た照明が途切れることなく続いている。
 見た目は綺麗だけども水路は水カビの臭い薄く漂っていて、長時間居たいとは思えなかった。
 その中を泥剣団が探索をする。

 水路には巨大な蜘蛛がいたり、気色の悪い虹色の蛙がいたり、巨大な蛇がのたくっていたり、水路の中を泳いでいたり、他にも人の手に似た肉の塊が蛇と一緒に水路を泳いでいたりしていた。
 水路は四方を囲まれていて、目立った突起物も無かったので音がよく反響する。
 少し喋っただけでも反響して耳に痛い。水の流れる音と跳ねる音、それすらも耳に痛くて、水カビの臭いも相まって精神が汚染されていく。
 人が歩ける道は人一人が十分に歩ける幅なんだけども、並んだら狭い。剣も振るいにくい。制限が多く、地上にいる時と比べて十分に戦えない。

 身体の反応も鈍く、覇気も徐々に萎んでいく。
 その中で進むものだから泥剣団の人間が次々に倒れていって、水路の水に赤が混じる。
 蛇が死体を食べて、人の手の形をした肉の塊が潰して、蜘蛛が破片を漁って。
 そんなものも見せられて士気は下がり続ける。

 主人公の男も身体は重いけども、水路に住み着いたモンスターたちをすべて討伐して、街の人たちに、ひいては老婆に安心させたいがために奥に進む。
 仲間が全て倒れて、一人になっても奥に進んで、ボスらしき醜い魚人を殺して、血だらけの這う這うの体で街に戻る。

 街には人がいなかった。
 しん、とした静寂に主人公の男が戸惑う。
 最近仲良くなってきた住人の家に行って戸を叩いたり、名前を呼んだり、誰かを呼んでも誰もいなかった。
 主人公の男は不安に囚われながら、泥剣団がとっていた宿に向かう。
 宿のカウンターに老婆が一人だけぽつんと座っていて、主人公はそれにホッとする。

 主人公の男が痛む身体を引き摺って老婆にどうして街の人がいないのか訊く。
 その時に、老婆の腹が膨らんでいることに気付いて絶句する。
 老婆はすまなそうに説明する。

 泥剣団が派遣されたこの街は、ある思想を理念とし、それを基盤として栄えた街であること。その思想というのは邪教、悪魔教、あるいは正義の教え。地を汚す人類を根絶やしにするために創られた街。ここで生まれ、育った住人たちは小さな頃から「洗脳」されてきた。
 泥剣団は水路に入った直後から住人たちは「子」を孕んで他の街に行ったとのこと。
 女は「子」を腹に宿し、男は「苗床」にし栄養を分け与える。

 老婆は自身の膨らんだ腹を撫でて男に説明した。
 絶句する男に、老婆は非常に申し訳なさそうにして「ごめんね、ごめんね」と何度も謝った。
 騙すつもりは無かった。けども間違ったことではないと思った。あなたが絶望するのは、私たちとは考えが違うからだということも分かっている。けれども、これが「私たち」であり、あなた達と仲良く出来たのは嬉しかった。楽しかったと、老婆はそう言ってもう一度ごめんねと言う。

 主人公はそれを聞いて老婆を殴り倒す。
 悪魔め! だとか、騙すつもりはなかった!?嘘を吐け、この化け物共!と罵る。
 腹の中の物が何かを直感的に理解した主人公は老婆の腹の中の物を殺そうとする。
 悪魔め、悪魔め、とぶつぶつ呟いて、血だらけで剣を握る。
 老婆は申し訳なさそうに「…この年で子を産むのも、どうかと思っていたのよ」と言って抵抗をしない。

 主人公はそれを見て「どうして最後まで騙していてくれなかったんだ!!」と叫ぶ。
 老婆の腹を裂くと、水路の奥で殺した魚人の稚魚らしきものが大量に溢れた。
 「栄養源」である主人公は瞬く間に齧られる。

 そんな感じの夢だった。


 

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