食欲はまったく無かったが、煽るように胃に流し込んだ。固形物が多くなくて良かった。白い子にも飲んでもらわないと、と見下ろすと、子供は私の腹に顔を埋めたまま小刻みに震えていた。
髪を手櫛で梳き、いまだ震える子供をなだめる。猫を撫でるように頭を、怪我に障らぬよう背中を、寒そうにしている腕を、順に撫でて、ようやく白い子の震えは収まった。
白い子はゆるゆると私を見上げて、不安そうにしている。
私は椀を差し出した。白い子はゆっくりと身体を起こして受け取る。両手で椀を持ち、ちびちびと飲んでいく。白い猫にも分けていて、私はそれを見て自分の分もあげれば良かったと思った。
飲み終わると、ほぅ、と息が漏れた。
「あ、あの、……あったかい、ですね」
まだ表情は硬いが、少しだけ柔らかくなった顔で微笑む子供。
同意するように頷くと、「ぇへへ……」と笑ってまた私の膝に頭を乗せた。
太ももに頭をこすりつける白い子を撫でる。
何もかもが面倒くさく、手を動かすことすらできなかった私だったはずなのに、私は今手を動かすことに何も感じていない。それが自然なことであるように、手が勝手に動く。
私は、いや、この身体はこの子のことが大事だったのだろうか。
そう考えて、考えることが面倒くさくなった。
シン、と静まり返った部屋。血とほこりとカビの臭いが混ざった部屋の中、ここで何が起こったのか考えることはせず、私は目を閉じた。