黒髪の少年の許可の下、子供たちに毛布をかける。子供たちは寒さに耐え忍ぶ動物のように身を寄せ合い静かな寝息を立てている。隣の子の手を握り、あるいは抱きしめて寝る彼らは、見た目の痛々しさもあって見ていて気分の良いものではない。
黒髪の少年は毛布のかけられた子供たちをぼんやりと見たあと、静かに目を閉じて寝入った。
彼らの怪我の具合は同田貫と比べると少しは軽い。目を開ける者が私一人しかいない部屋で考える。彼らはどうして怪我を負っているのだろう?
同田貫は離れの人物をクソ野郎と言っていたが、あの声の主がやったのだろうか。人を傷つけて興奮する性質か。なんとやっかいな。
だがそれだといろいろ納得できるものがある。この部屋の人たちは、部屋に訪れる者を極度に恐れている。
それはあの声の主の来訪を恐れているからではないか? もしそうなら面倒なことこの上ない。
自分の身体を確認する。傷ついている彼らに比べると、この身体は怪我が少ない。擦り傷や小さな切り傷があるだけで、深く沈んだ色の着物も薄汚れているくらいか。
あの声の主がここに来ても、肉壁程度にはなるだろう。両の手のひらをゆっくりと開き、ゆっくりと握り込む。込められる力は申し分無い。荒事は経験が無いが、殴ることぐらいはできるかもしれない。
面倒だと思う気持ちは何故か湧かない。
身体が違えば感じる物も違うのか。なんの因果か、この身体の主になってしまったんだ。少しぐらいは働かないとな。俺もそこまで薄情ではないし。
いつの間にか閉じていた目を開く。
遠くで、ガコンという何かが動く音が聞こえて振り返った。ギギギ、と重厚な木板が軋む音。
気になった。自分は、私は音の鳴る方へ歩きだした。