しばらくの時間、白い子を抱きしめてその背中を撫でていると、背に回っていた腕が力を失っていった。完全に力が抜けた状態になり、伺うと白い子は目を閉じていた。規則正しい呼吸。どうやら寝たようだ。
同田貫と同じように、白い子も元の場所に寝かす。もう一度ぐるりと見回す。白い子と同じぐらいの小さな子供達が部屋の隅っ子に固まり、一人だけ背の高い少年が壁に背を預けて彼らを見ていた。黒い髪の毛は長く、手入れがされていないのかツヤがない。まとめられてもいない髪は身体の傷もあいまって不気味だ。
同田貫を止めるよう私に頼んだ紫の髪の男は、床に転がって眠っている。この部屋は広いわりに人が少なかった。全員が全員毛布やらをかぶっておらず、寒そうだ。
彼らにかけてやる毛布を探しに行こうか。
そう思い至って、私はのろのろと立ち上がる。
「……また、どっか行くの」
髪の長い少年が独り言のように話しかけてくる。
うろんげな目と疲れた姿が幽鬼を彷彿させる。私は軽く頷いて部屋を出た。
静かな座敷。今度は人を追うこともなく、ゆっくりと部屋を一つ一つ回っていく。部屋は綺麗なところが多かった。誰かが生活していた痕跡がそのままあり、開かれた本や片付けられていないテーブルゲームが、突然人が消えてしまったのかと想像させた。
本当に人が消えてしまったのだろうか。
一つ一つ回って、あの部屋にいた人数より明らかに多い部屋数にその想像が的を射ているのではないかと思わせる。どこも手付かずのまま、あるいは妙に小奇麗に整っていた。
部屋に入るのはためらわれ、開いて中を目測で確認した後閉める。布団が敷かれていたらそれを持って行こうと思っていたが、なかなか見つからない。
ゆっくりと部屋を回り、寂しげな景色を眺める。歩いていて分かったがここは随分と広い。私は無意識のうちにこの座敷だけが、塀に囲まれた敷地内にあるのだと思っていた。だがそれは間違いだったみたいだ。
昔の日本の城のように、大きな敷地の中に他の建物もある。五重の塔に似た物見が少し遠くに見え、よく見ようと目を細めた。座敷と物見の間には道があり、短冊敷きの切石畳が各建物への道を示している。
石と石の間に間隔があり、それが示す一本を目で追うと、この塀の外へと向かうであろう立派な門構えがあった。どこかくたびれた雰囲気のある門を眺めて、興味を失って座敷の探索を再開する。
部屋の一つからようやく毛布を発見できた私はそれを手に部屋へと戻った。